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座右の銘

【23回忌法要】

先日、鎌倉の覚園寺で執り行われた、お仲人さんの23回忌の法要に参列してきました。

この「回忌」というのは、1、3、7、13、17、23、27、30、50、と行われるものなんだそうですね。

そのいわれは分かりません。今度調べてみたいと思います。

53歳の若さで旅立たれたOさんは、我々夫婦のお仲人さんでもあり、私の恩人でもあります。

恩人というのは、今につながるビジネスパーソンとしてのスタンスや、組織や人への関り方を教えてくださったからです。

彼の教えで人生が決まったと言っても過言ではありません。

【O氏の教え】

Oさんは、私がリクルートに入った当時の上司です。

正確に言うとお二人目なのですが、最初の上司は入社してほどなくお辞めになったので、ほとんど記憶になく、私の中ではO氏が最初の上司です。

入社時の上司は、一生を左右するほどインパクトがあると思うのですが、その点ではとても幸運だったと感じています。

新入社員にも関わらず、アルバイトのメンバーを抱えるSPIなどのテストを管理する(在庫を管理し、発送し、回収し、採点し結果を報告するオペレーション部署)部署に配属されました。

何しろ田舎から出て来たばかりで、右も左も分からず、アルバイトの経験もほとんどなかった私は、仕事の仕方からして分からない。

全員が年上であるメンバーとの関り方ですぐに壁に直面し、半ば出社拒否の数ヶ月を過ごしました。

なぜリクルートは私なんかを採用したんだろう。

そのうえ、このような年上ばかりのメンバーを仕切るような仕事になぜ配属したのだろう、と恨みの気持ちすら湧いてきていました。

このまま首になるのかなあと思っていたところに、O氏から呼び出しがあり面談をしました。

もう40年も前のことにも関わらず、当時のことを今でもありありと思い出すことができます。

それぐらい私にとってはインパクトのある面談でした。

O氏は、私にこう言いました。

「お前は辞めようとしていると思うが、今から言う3つのことを聴いてからにしてくれ」

彼の言った3つのことというのは・・・

1.自分の可能性を信じろ(辞めるのはやめろ)

2.新鮮な目で改善すること(何も知らないことを武器にせよ)

3.メンバーを知ること(動かそうとするな)

この3つのことでした。

「自分の可能性を信じろ」については「天下の(当時まだ数百名の会社で“天下の”でもありませんでしたが)リクルートの人事部がお前を選んだのには理由がある。誰にだって将来花開く才能があるし、大きな可能性があるんだ」と言われました。

このことはO氏の口癖であり、人を見る時のスタンスだったようです。

『誰でも可能性を秘めている』『花開くのを待っている才能が必ずある』

このことを固く信じている人で、人を見つめる目がいつも暖かく、何があっても部下を見捨てない人でした。

「メンバーを知る努力をしろ」については、「お前はメンバーを動かそうとしているだろう。そんなことよりも、一人ひとりをよく知る努力をしろ」と言われました。

「F君がこの歳になってもリクルートでアルバイトをしている理由をお前は知っているか」「T君の将来の夢を知っているか?」「S君には彼女がいるかいないか」

私は、ほとんど答えられませんでした。

メンバーを大切にするということは、知ることから始まるということを教えていただきました。

今は、個人情報保護の観点で同じようにはいきませんが、その考え方は今も、これからもずっと大切だと思います。

「分からないことを武器にしろ」は、分からないからこそ感じられるちょっとした違和感や、素朴な疑問や、気がついたアイデアを大切にせよ。恥も外聞も捨ててそれを素直に出せ。ということです。

この3つのことは、とても私の胸に響き、すぐに実行に移しました。

実行に移すとすぐに状況は好転します。

動かそうとせずに、知ろうとする努力が人を動かすことを知りました。

知らないことを強みにして、素朴な感性を大事にする開き直りがイノベーションの種を生むことを実感しました。

そして何より、自分の変化と周りの変化に喜びを感じ、仕事が面白くなる回転が始まったことを感じることができました。

【座右の銘】

あれから40年。

今でも私の座右の銘は

『誰でも可能性を秘めている』『花開くのを待っている才能が必ずある』です。

Oさんは天国にいますが、座右の銘と共に、人を見る時の目の暖かさ、人の才能と可能性を信じる心は受け継いでいきたいと思っています。

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