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企業文化を考えよう

第5回の「組織ラジオ」で「企業文化と組織風土」について語り合いました。

いつもよりも延びて20分ほど一気に喋りましたが、ちょっと不完全燃焼でしたね。

「組織ラジオ」ぜひ聞いてみてください。

 ↓ こちらのURLより

分っているようでいて、分かりにくいのが「文化」や「風土」というものですね。

22年間組織に関するコンサルティングを生業にしてきましたが、最も難しいのはこの「文化」と「風土」の取り扱いでした。

言うまでもなく目に見えないものであり、定義も不明瞭で、どこの会社でも通用するような確固たる方程式も、正解も存在していないものであるという点においてです。

もう一段、考えに磨きをかけないといけないかもしれません。

まずは、ラジオで丁寧に説明できなかったストーリーを共有したいと思います。

【結論:企業文化と風土の違い】

まず最初に明確にしておきたいのは、企業文化と組織風土の違いということについてです。

文化と風土の違いですね。

同じように使われていますし、定義も曖昧になっているように思います。

この後に長々と論じる根拠において、組織コンサルティングを始める時に、私は、二つの言葉の定義を勝手に明確にすることにしました。

企業文化:競争優位を磨き、強化する目的で、意思を持って社内に作り上げる仕事の仕方や、ものの考え方、価値観、ルール、しきたりなどのことを言う。

組織風土:長く活動しているうちに、組織の中に出来上がった雰囲気や空気感、人間関係などの様子のこと。

このような定義にすることによって、組織づくりの考え方がとても明確になったんですね。

それはどういうことかを、この後詳しく説明したいと思います。

次のような順番で長くなりますが、最後までおつきあいください。

・経営とは

・戦略とは

・競争優位について

・組織戦略の本質

・企業文化について

【経営とは・・】

遠回りなようですが、前提として「経営」とは何をしているのかをはっきりしておきたいと思います。

「社会に何らかの形で参加・貢献しながら、利益をもとにその活動を継続していく」

色々な表現はありえますが、意味としてはだいたい合っているのではないかと思います。

では、そのために日頃何をしているのでしょうか。

細かい業務内容を上げていけばキリがないのですが、全てをそぎ落としてどのような業種業態にも共通なシンプルな表現にするとこうなるのではないかと思います。

意思を持って/計画し/実行する

■意思を持って・・・

自分の意思のない経営は、モノマネ経営、成り行き経営です。

■計画し・・・

計画のない経営は、その日暮らしです。

■実行する

実行しない計画は絵に描いた餅です。

この3つに分けられているフレーズは、経営の本質を最小単位で表していると私は考えます。

この3つは全て重要なのですが、まずもってこれがなければ経営にならないというベースは「意思を持つ」ということではないでしょうか。

意思を持って決めたこと、意思を持って計画したことは、うまくいかなかった時にも再度意思を持ってやり直すことができます。

たまたま思い付きでやったことや、深い考え無しに物真似でやったことは、うまくいかなかった時のやり直し修正もまた、思い付きや物真似を繰り返すことになり、失敗を重ねている例は枚挙にいとまがありません。

【戦略とは・・】

さて、この「意思を持って/計画し/実行する」にひとつ要素を加えるとしたら何がふさわしいでしょうか。

それはもう言うまでもなく「戦略」です。

「戦略」とは何か? 

これも色々な定義が色々な本に書いてあるわけですが、シンプルに言ってしまうと・・・

『「計画と実行」を勝てるものにする』

ということですね。

誰に勝つのか?それは当然「ライバルに勝つ」です。

「同業他社」と言ってもよいでしょうか。

(もっともこの頃は、同業でないところから突然ライバルが現れる時代ですが)

【競争優位】

事業をライバルに勝てるものにする、もとになるものを「競争優位」と言いますね。

差別化と言ってもよいでしょうか。

もっと平易に言うとライバルに勝てる「強み」を作り出し、磨くということになります。

このライバルに勝てる競争優位(勝つための強み)を磨くことが「事業戦略」の中核になるわけなんですね。

【組織戦略の本質】

競争環境の真っただ中で、ライバルとお客様から「選ばれる」競争を繰り広げている企業は、何かしらの「競争優位」が無ければ生き残ることができません。

退場を余儀なくされている企業の理由は二つでして「競争優位が曖昧になった(無くなった)」か「経営が下手だったか」のどちらかです。

それくらい不可欠な「競争優位」を組織的に作り出し、磨きあげる能力のことを「組織力」と言います。

この「組織力」をどういう施策で上げていくかを考えるのが「組織戦略」です。

ラジオの中で高野慎一さんが、チャンドラーの「組織は戦略に従う」という言葉を紹介していましたが、もっと突き詰めれば「組織は競争優位に従う」と言ってもよいと私は思います。

組織力と言っても、大雑把ですのでいくつかのカテゴリーに分けて考えていきます。

■企業理念/ビジョン:競争優位に意識が向くような理念・ビジョンであるか

■リーダーシップ:経営陣や管理職が競争優位を磨くために何をするか

■組織構造:競争優位を保ち、磨くのに相応しい組織構造になっているのか

■各種の仕組み:色々な仕組みが競争優位を保ち磨くことにつながるものになっているか

■企業文化:競争優位を保ち磨くための文化が作れているか

■人材:競争優位を保ち磨くことに貢献する人材になっているか

経営者は、寝ても覚めても「競争優位」であり、組織もそこにもっともっとフォーカスする必要があると私は思います。

企業が落ちていく最大の理由は、この競争優位を保ち磨くという取り組みへの甘さなのではないでしょうか。

【企業文化と組織風土】

やっと本題にたどり着きました。

冒頭の企業文化と組織風土の定義を再確認しておきます。

■企業文化:競争優位を磨き、強化する目的で、意思を持って社内に作り上げる仕事の仕方や、ものの考え方、価値観、ルール、しきたりなどのことを言う。

■組織風土:長く活動しているうちに、組織の中に出来上がった雰囲気や空気感、人間関係などの様子のこと。

「経営」の定義を思い出していただきたいのですが、経営とはことごとく「意思を持って計画し実行する」ものでなければならない、ということでした。

組織力のひとつの要素である、企業文化も・・・

「競争優位を上げるために社内の仕事の仕方や、ものの考え方や、価値感やルールやしきたりをどう変えていけばよいか」を意思を持って仕掛けていくことが必要だ

ということです。

ラジオの中では、リクルートと、高野慎一氏の最初の転職先の老舗の法令出版社の例が語られていました。

リクルートの競争優位は、私は「現場の変革力」にあると考えます。

紙の時代から、ネットに変わるまで「情報を編集して必要な人に届ける」事業を主力事業として展開してきたリクルートですが、幾多のライバルが登場しようとも、そのたびに商品に磨きをかけ、ライバルを駆逐して利用者の信頼を勝ち得てきました。

それは、例えば情報誌なら情報誌の見やすさ、使い勝手(インデックスの付け方から、記事のレイアウトから、全てに関して)を磨き上げる力が圧倒的なわけです。

一々上にお伺いを立てて許可を取ってから変えていくのではなく、よく分っている現場チームが自由に出したアイデアを磨き上げ「スピーディーに反映させる」圧倒的な感性とスピード感が勝因になっているわけです。

そうした競争優位を保ち磨いていくために寄与していたのが「考える文化」「任せる文化」「言い出しっぺがやる文化」「失敗を許容する文化」といった企業文化だったわけなんですね。

これらの文化はいつのまにか知らない間にできたわけではなく、「お前はどう思う?」「任せるからやってみろ」「言い出しっぺのお前がやれ」「(失敗した際に)次に何倍かにして取り返せ」という言葉を代々受け継ぐことによって強固に「作り上げた文化」であるところがポイントです。

ついでに言いますと、そうした文化のもとで、結果として「風通しがよい(自由にものが言える)風土」や「ノリのいい風土」が醸成されていったわけなんですね。これが企業文化と風土の意味の違いということです。

一方ラジオでは、某法令出版社の場合は、法令という間違いがあってはいけない世界において、滞りなく変更点を修正し差し替える「ミスのない正確な仕事ぶり」が競争優位である。

そうした仕事ぶりにつながる企業文化を作る必要があった(リクルートの“任せる文化” “失敗を許容する文化”を無理矢理作っていっては、せっかくの競争優位を損ねてしまうということになる)という話がされていました。

【企業文化の蓄積が競争優位の源泉】

長くなってしまいましたが、繰り返しておきたいのは、企業文化というのは、その企業の「競争優位を磨くこと(あるいは作り出すこと)」に直結するように意思を持って作り上げていくものである、ということです。

言い方を変えれば、意思を持って「設計(デザイン)」するものと考える必要があります。

そのように考えていきますと、企業文化そのものが、非常に重要な競争優位になりうると言っても過言ではないと私は考えます。

経営者や人事部の皆さんは、これまで以上に「企業文化」に意識を持たなくてはならないと思います。

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